農場だより - 農薬を使わない、優しい"虫対策"
5月に入った明野ハーブ農場。暖かくなるにつれ、虫たちが活発に動き出します。
同時に、害虫(ハーブに悪さをする虫)対策に頭を悩ませる時期がやってきました。一般的な農業では害虫が発生すると農薬を使用して対処しますが、私たちは環境に負担をかける可能性を考慮し、有機JASで使用が認められた自然農薬ですら一切使用しません。
私たちは農薬を使わずにハーブを守るために、「害虫を食べる虫を増やす」という自然の力を借りて対策をしています。今回は、農薬を使わない害虫対策の具体的な取り組みを2つご紹介します。
こちらは根っこに「抜群の保湿力」があるアルテアの5月の姿です。
今のところ順調に成長していますが、時々根っこが害虫に食べられてしまいます。栽培中に土を掘って根っこの状態を確認しますが、毎度食べられていないがドキドキします。
そこで登場するのが「マリーゴールド」です。
マリーゴールドの特徴は、根っこから根を食べる害虫を遠ざける成分を出すこと。アルテアの根を守るためには相性抜群のハーブです。「アルテアを守ってくれよ~!」と願いを込めながらアルテアの近くに植えていきます。
2つ目の例は、保湿力と肌を柔らかくしてくれるゼニアオイです。5月現在の様子を見てみると、植えてまだ1ヶ月ということもあり、小さいです。
ゼニアオイは葉の裏にアブラムシという害虫が付きやすく、葉の成分を吸われてしまい最悪の場合枯れてしまいます。5月末ごろから大量に発生するので、葉の裏をビクビクしながら確認します。
そこで! アブラムシから守るために登場するのが「エンバク」という麦の一種です。
こちらが細長いエンバクの種です。
エンバクを栽培する理由は、アブラムシを食べるてんとう虫に関係があります。
てんとう虫はエンバクを住み家にする傾向があるため、てんとう虫を増やしてアブラムシを食べてもらうことでゼニアオイを守るという作戦です。
てんとう虫がこのエンバクの家を気に入って住み着いてくれることを願って、ゼニアオイの脇に種を蒔きました。
害虫が発生しない環境は一朝一夕にはできません。農薬ではなく先人の知恵と自然の力を借りて「日々丁寧に工夫と努力」です。
みなさんの肌が喜ぶハーブを立派に育て上げるには時間をかけて色々な実験を重ね、ハーブが過ごしやすい環境を作る地道な努力が必要になります。そして、万が一害虫が発生した場合は、収穫にたどり着くまで手作業で地道に対処していきます!
ネイチャーズウェイ自社農場「明野ハーブ農場」について
明野ハーブ農場は、山梨県北杜(ほくと)市にある栽培面積3,850㎡の有機栽培を行う自社農場。明野ハーブ農場がある土地は富士山、南アルプス連峰、八ヶ岳連峰に囲まれた茅ヶ岳の南西部、標高800mに位置する丘陵地で、日本一日照時間が長いことで知られています。また昼夜の寒暖の差が大きいため、過酷な環境下でも耐え忍ぶ生命力の高いハーブが育ちます。
農場では、全20種類のハーブを栽培し、製品の原料としても使われています。
▲農場で栽培しているハーブの一部です
■国が認めた「有機JAS認証」を取得
さらに、明野ハーブ農場では、2012年より「有機JAS認証」を取得しています。
<有機JAS認証とは?>
有機JASとは、2000年に改正された日本農林規格(JAS)によって、有機農産物などの表示を認証したもの。 認証は該当物資の生産方法の確認に始まり、製造工程、流通方法、商品の保管・管理とその責任者の制定に至るまで細かく設定され、そして認定検査官の事前審査とオーガニックに関する講習を修了して認定となります。
<取得条件>
・最低でも3年以上は土壌に農薬を使用していない
・有機肥料であっても化学成分や重金属が含まれていないものを使用する
・土壌の性質に由来する自然循環機能の維持増進を図る
・環境・衛生管理の整備(外部からの異物流入や混入も防止)
・上記に関する管理プログラムの制定とその実施
・上記に付帯する全ての事項に関する第三者認定機関による検査および年次更新の審査
日本ではオーガニックコスメに関する法的定義が存在しないのが現状ですが、食品分野においては世界各国ともに法的な規制のもと厳格な定義があり、日本では「有機JAS」がこれにあたります。つまり、有機JAS認証を受けたハーブは、国が認めた公的な有機(オーガニック)農産物だと言えるのです。
スタッフ紹介
開発調査室
荒木真人
農業イベントを企画する会社に7年間在籍し、有機農家にて1年ほどの研修を経験。
「ハーブ栽培」「有機農業」に携わりたいとの思いから、2019年にネイチャーズウェイへ入社。趣味は旅行と読書と家庭菜園。